「学校でスクラッチをやったよ」とお子さまから聞いて、「スクラッチって何だろう?」と検索された保護者の方は少なくありません。プログラミングと聞くと、黒い画面に英語がずらりと並ぶ難しい世界を想像して、「自分には教えられない」と身構えてしまうかもしれません。けれども、スクラッチはまったく違います。この記事では、スクラッチとは何か、なぜ世界中の子どもたちに使われているのか、家庭でどう始めればよいのかを、専門用語をかみくだいてお伝えします。読み終えるころには、お子さまの「やってみたい」を安心して応援できるようになっているはずです。スクラッチ(Scratch)とは、アメリカのマサチューセッツ工科大学(MIT)の研究グループが開発した、子ども向けのビジュアルプログラミング言語(絵や色つきのブロックを組み合わせて命令をつくる仕組み)です。日本でも小学校のプログラミング教育で広く使われており、「スクラッチとは何か」を知ることは、これからの子どもの学びを理解する第一歩といえます。スクラッチとは?子どものために生まれた学習ツールスクラッチは2007年に公開されて以来、世界中で使われている無料の学習ツールです。難しい英語の文字を打ち込む代わりに、「10歩動かす」「もし〜なら」と日本語で書かれたブロックを、パズルのようにつなげるだけでプログラムが完成します。命令の文字を一文字でも打ち間違えると動かない本格的なプログラミングと違い、ブロックは正しい形どうしでしかつながらないため、小さな子どもでも挫折しにくい設計になっています。作れるものはゲーム、アニメーション、音楽、クイズなどさまざまで、「自分の好きなものを形にできる」ことが、子どもが夢中になる最大の理由です。何歳から使える?必要なものは?スクラッチの推奨年齢は8歳〜16歳とされていますが、5〜7歳向けには「スクラッチジュニア(ScratchJr)」という、文字が読めなくても使える姉妹版も用意されています。小学校低学年ならスクラッチジュニアから、小学校中学年以降ならスクラッチから始めるのが一つの目安です。必要なものは、インターネットにつながるパソコンまたはタブレットだけです。利用は完全に無料で、会員登録をしなくても作品づくりを体験できます。【クラッチJr.とスクラッチについて詳しく解説した記事はこちら】なぜ注目される?小学校プログラミング教育との関係スクラッチが日本の保護者の間で知られるようになった大きなきっかけは、学校教育の変化です。文部科学省の新しい学習指導要領により、2020年度から小学校でプログラミング教育が必修化されました。この必修化の目的は、プログラマーを育てることではなく、「プログラミング的思考(物事を順序立てて考え、試しながら答えに近づく力)」を育むことにあります。多くの小学校で、その教材としてスクラッチが採用されています。つまりスクラッチは、一部の「パソコンが得意な子」のための特別なものではなく、すべての子どもが学校で触れる可能性のある、いわば新しい時代の文房具のような存在になりつつあるのです。また、内閣府の「令和5年度 青少年のインターネット利用環境実態調査」によると、小学生(10歳以上)のインターネット利用率はすでに9割を超えています。子どもたちが日常的にデジタル機器に触れる今、「ただ見る・遊ぶ」側から「自分でつくる」側へ経験を広げてあげることが、スクラッチが注目される背景にあります。スクラッチで身につく3つの力スクラッチの学びは、パソコンの操作技術にとどまりません。保護者の方に知っていただきたいのは、教科の枠を超えた次のような力が育つことです。順序立てて考える「プログラミング的思考」キャラクターを思いどおりに動かすには、「まず右を向く、次に10歩進む、そこで音を鳴らす」というように、手順を細かく分けて正しい順番に並べる必要があります。この経験の積み重ねが、作文の構成や算数の文章題など、他の学びにも生きる思考の土台になります。失敗を恐れず試す「トライ&エラーの姿勢」スクラッチでは、思ったとおりに動かないことが日常茶飯事です。しかし紙のテストと違い、何度でもすぐにやり直せます。「間違い=悪いこと」ではなく「間違い=ヒント」と捉える経験は、失敗を過度に恐れがちな子どもにとって大きな財産になります。自分の考えを形にする「創造力と表現力」用意された正解をなぞるのではなく、「こんなゲームをつくりたい」「この動きを見せたい」という自分発のアイデアを形にできるのがスクラッチの魅力です。完成した作品を家族に見せて説明することは、そのまま表現力のトレーニングにもなります。【プログラミング的思考とは何かを解説した記事はこちら】スクラッチの始め方3ステップ家庭でスクラッチを始める手順は、次の3ステップだけです。パソコンやタブレットのブラウザで、スクラッチ公式サイト(scratch.mit.edu)を開く画面の「作る」を押して、制作画面(エディター)を開く左側のブロックを右側の作業スペースにドラッグして、キャラクターを動かしてみる最初は「10歩動かす」ブロックを1つ置いて、キャラクターが動く体験をするだけで十分です。公式サイトにはチュートリアル(操作を順番に教えてくれる案内)も用意されているので、保護者がプログラミングを知らなくても問題ありません。大切なのは、教えることではなく、「動いたね!」「次はどうしたい?」と一緒に画面をのぞきこむことです。保護者のよくある不安と向き合い方スクラッチに興味を持ちつつも、一歩ためらう保護者の方の声には共通点があります。代表的な3つにお答えします。まず「親が教えられないのでは」という不安について。スクラッチは子どもが自分で試しながら学べるように設計されており、保護者の役割は先生ではなく応援団です。むしろ「お母さんにやり方を教えて」と頼むことで、子どもの理解はいっそう深まります。次に「ゲームで遊ぶだけにならないか」という心配について。スクラッチでの遊びは「つくる遊び」です。市販のゲームを消費する時間とは違い、頭の中では常に「どうすれば思いどおりに動くか」という試行錯誤が回っています。ただし、利用時間のルールを親子で決めることは、他のデジタル機器と同じように大切です。最後に「うちの子に続けられるか」という不安について。飽きてしまう子の多くは、能力の問題ではなく「次に何をつくればいいかわからない」という壁にぶつかっています。この壁は、適切なお手本や、少し先を行く仲間の存在があると、驚くほどすんなり越えられることが知られています。独学と教室、それぞれの良さスクラッチは無料で始められるため、まずは家庭での独学からで十分です。そのうえで、次のような違いを知っておくと判断しやすくなります。独学の良さ: 費用がかからず、自分のペースで好きな時間に取り組める教室の良さ: つまずいたときにすぐ質問できる、作品を発表し合う仲間がいる、ゲームづくりの次のステップ(より本格的な制作)へ計画的に進める特に「もっと本格的なゲームづくりに挑戦したい」という気持ちが芽生えたときは、子どもの熱が冷めないうちに環境を整えてあげることが、才能を伸ばす分かれ道になります。まとめ:スクラッチは「つくる楽しさ」への入り口この記事の要点は次の3つです。スクラッチとは、ブロックを組み合わせてゲームやアニメーションをつくれる、子ども向けの無料ビジュアルプログラミング言語である小学校のプログラミング教育でも広く使われ、プログラミング的思考・試行錯誤の姿勢・創造力が育つ保護者に専門知識は不要で、家庭のパソコンやタブレットから今日でも始められるスクラッチで「自分の手で何かをつくる楽しさ」を知った子どもは、そこからぐんぐん世界を広げていきます。もしお子さまが「もっとすごいゲームをつくりたい」と目を輝かせ始めたら、それは次のステージへのサインです。ゲームクリエイター探究講座では、スクラッチの一歩先にある本格的なゲームづくりを、子どもの「好き」を起点に伴走しています。お子さまの熱中を次の成長につなげたいと感じたときに、選択肢のひとつとしてのぞいてみてください。▶ ゲームクリエイター探究講座の詳細を見る